従来の多くのモデル選択基準は、"モデルの単純さ"と"データへの無矛盾性"の間でのトレードオフに基づきユニークなモデルを選択する。この原理ははオッカムの剃刀とも呼ばれ、有名な基準にはAkaikeの情報基準(AIC)、Minimamum Description Length(MDL)などがある。
これに対して、Matchable原理では認識行動などを行うシステムが選択すべきモデル(内部構造/表現とも言える)は、マッチング機会を最大化するものであると考える。そのためMatchable原理においてはモデルの単純さ(Simplicity of Model)とデータの説明領域(Coverage for Data)のトレードオフがその焦点となる。
さらに、Matchabilty基準とは、マッチング機会の程度を見積もる量である。
図1Mathable原理とオッカムの剃刀
状況分解では、第2図に示すように、データベースのような特徴量(属性/フィールド)の集合とイベント(レコード)の集合の組み合わせからなる属性ベースの情報化から、その一部を取り出す。抽出すべきその一部とは特徴量とイベントを同時に選択による部分状である。抽出可能な組み合わせは非常に沢山存在するが、提案しているアルゴリズムではMatchability基準が極大となるMatchable状況をと抽出する。
図2 状況分解
図3のような配置で、3特徴量の立方体中の二つの平面状にイベントが存在している場合には、状況分解アルゴリズムは、二つの平面とその交差する直線の三つの状況を取り出す。たとえば、Matchable situation 1 (MS1)では、y軸は無視された二つの特徴量とx+z=1の平面状のイベントが選択される。
抽出されたMatchable状況を用いると般化による予測の能力の向上が期待される。たとえばφ(0,1)のような多価関数を考えた時に、(1)入力状況Aの右半分が失われていても、φMS1(0,1)=1のように、般化をすることができる。(2)MS1とMS2の出力を分けて行える(そうでないと、平均値を出力してしまうかもしれない)。
4. 応用分野Matchability基準による状況分解は一種のデータ解析処理であり、これにより得られるMatchable状況はソースデータの情報構造を反映するので、未知データに対する予測性が向上し、データ解析、予測、推論、行動決定などの様々な場面で効果が期待できる。 そして出力結果は規則それ自体というよりも、規則性が高い部分データであるから、多くの既存の手法の前処理として利用する事もできる。 さらにに関連の強い特徴を集める特徴量選択アルゴリズムとして、また学習アルゴリズムとして利用すれば自己組織的にネットワークを生成する事も可能である。 ○壁際状況の抽出現在のところ右図のように、その周囲に距離センサをもつ移動ロボットが室内を移動しながら情報を収集し、その情報を状況分解することで、”壁際状況”を取り出せることの実験を進めている[2]。壁際状況では以下のような選択が行われる。
壁際状況を用いれば、1)壁以外の方向に他の障害物があっても壁が認識できる、2)コーナーを二つの壁として認識できるなどの効果がある。 |
図4 壁際状況を取り出す移動ロボット |
この技術はエージェントネットワーク型の認知アーキテクチャであるCITTA(Cognition based InTelligent Transaction Architecture)のエージェントの接続構造を獲得することを動機として開発された。
以下では関連する技術との簡単な比較を行う。
クラスターリング
特徴量選択
重みつきCBR
関数従属性
関連に基づく学習(Relation based Learning)
実世界の事物はすべてお互いに確率的な相関構造のネットワークで結ばれている.例えば,遠くにある山の高さは,周辺の木,側にいる人,遠くで走っている列車等と実世界でで客観的な相関関係を保っている.
学習とは,実世界における事物の客観的な相関関係を知ることである。
実世界における様々な手がかりの確率的相関構造を獲得し,実際の判断は,事物の客観的な相関構造を背景知識として利用する遠くにある山の高さを推定するには,事物間の相関関係を利用するのであって,両眼視差による心的計算の果たす役割は小さい.
ネズミの迷路実験を説明するネズミは迷路までの様々な手がかり刺激の相互関係を学習する手がかり刺激と反応の連鎖では無いその結果学習が終了すれば,迷路の途中に障害物が現れても,適切な行動を選択してゴールに辿り着ける
Brunswik,E.はネットワーク構造を重相関分析により記述したが,確率的な相関構造を Matchability と言い換えれば,同じような説明ができる.重相関分析とMatchability の本質的な違いは線形と非線形
外界の実在物が「見える」のは網膜に映った像から計算されたものでは無い.我々が実世界の事物に向かって働きかけるアクションに連動して生じる刺激のパターンの中に,対象が実在するという情報が含まれ,人間はそれを抽出している.「対象と認識者の動きに連動する変化パターン」から何かを抽出しているそれが認知である.ギブソンの直接知覚説.
先天性盲児のソニックガイド実験
額のあたりから超音波を発信し,対象物に当たってはね返ってきた信号を可聴音に変換する.対象物までの距離,対象物の大きさ,対象物のきめに応じた音声波形を出力する.被験者はあっというまに,目の前に提示したおもちゃをつかむことができる.そこには視覚は関係ない.「対象と認識者の動きに連動する変化パターン」を学習することができれば実在を「知覚」することができる.
「対象と認識者の動きに連動する変化パターン」を Matchability で
抽出できれば,Matchability による知覚のモデルを主張できる?
Matchabilityでは、関係ないものは関係なく変化することによって状況分化が可能となる。